実は先日、夫婦喧嘩をした。あんた夫婦喧嘩なんてねぇ、犬も食わないっていうじゃないですか。
あ。夫婦喧嘩についての記事じゃないよ。そこらへんはわきまえてるから安心してくれたまへ。今回は夫婦喧嘩から見えてくる事についての記事である。
っていうかねぇ、我が妻、森下アリスは凄いざっくり言ってしまうと見た目が日本人ぽいが、中身が完全に海外の方なのである。それで日本語がペラペラなのである。このペラペラという部分については少し齟齬があり、。ペラペラというよりはズケズケ言うというべきか。
このペラペラとズケズケの相違について考察してみる。
アリスは生い立ちからして複雑怪奇なのであるが、おとんが華僑系米国人。おかんが日本人。そして日本で生まれ育ったんだが、ずっと日本語厳禁なインターナショナルスクール。教育は英語によるアメリカンな教育。そんな環境であるからして必然的に第1言語は英語。日本語はその次だったようである。
そんな米国流の教育を受けて周りもインターな方ばかり。なのに見た目が日本人に見えなくもない。それで日本語を喋ってしまうと周囲の人間は日本人として扱ってしまう。このギャップに苦しんでいたみたいだ。
あのねぇ。僕も初めて会って喋った時、びっくりしたんだわ。あれ?日本語ってこんなにはっきりした言語だったっけか?
なんていうか。。遠回しな言い方っていうのがないんだ。
『これ、だめ』『あなた、それおかしい』
。。。凄いストレートな言葉をさらっと使う。怒って言ってるか敵意があって言ってるなら分かるんだよ?だけど平常運転でニコニコした顔でそれ言うからギャップが変な感じにあってこっちが面食らうんだ。もはや日本語ですらないみたいだ。
最初会った時に僕がよく聞いたのが『キレてます?』だったからねぇ。
普通はさ、
『この部分はこうした方があなたのためになるんじゃないかな?』とかさ。
『これ、少しこういう部分がちょっと問題あるように周りから受け止められるんじゃないかしら?』とかさ。色々、言い方ひとつなんですよ!世の中は!
日本語ってオブラードに包んで包んで優しく相手の耳に届けるのに適している優しくも高度な言語なのだよ。
後、あれだ。日本語上級レベルの技として空気を出すというのがある。少しマイナスなバイブを感じさせる空気を出して相手にそれとなく感じさせる。高度な空気の使い手ともなると空気のみで相手の動きをコントロール出来るようになります。
凄いな。エスパーだな。
空気のやり取りっていうのもある。お互いに言葉を発さないで空気だけで会話するのである。昔、日本で働いていた時に同僚とよくやってたな。
『お前、やれよ』
『僕にも仕事あるから無理なんだわ』
『なんで出来ないんだわ?』
『では俺がこれやるから、お前これな?分かるよな?』
締め切りが迫って忙しくなってくると部署内でこういう空気を飛ばし合う。で、大概は相手のメッセージを読み違えてて大変なコトになる。
話が逸れすぎた。戻そうね。
アリスは英語で考える脳みそになってるから、日本語脳な僕と毎回喧嘩になってた時期もあったな。俺、アリスにまわりくどい日本語の使い方教えたもん。まわりくどいというかオブラードの使い方ね。でも、教えてるうちにだんだん俺がおかしくないか?って気分になってくる。
というのも海外生活を始めてどんどん僕もはっきり意見を言わなきゃいけない局面に遭遇する機会が増えてきたのと、英語を覚え始めてまわりくどい表現が面倒になってきたというのがある。こっちではまわりくどい表現してると『こいつは何を言ってるんだ?』となってしまいます。
空気を出しても、まず気づいてくれない。ほほえみがかえってくるだけ。
そしてある日、すごいことに気づいたんだ。何気なくYahoo! を見てて、ある記事が目にとまった。記事のタイトルは『国際結婚したカップルの悩み』みたいな感じ。
読んでみるとことごとく僕の感じていた事とヒットしてて。。で。気づいた。
『あ。俺。国際結婚したんだわ。』
アリスに言ったもん。『俺らが国際結婚だって知ってた?』返ってきた答えは『知ってた』。。って知らなかったの俺だけかよ!
結婚してからそれが『国際結婚』だったと気づく僕も凄いですが、。
アリスっていう名前もさ、もう呼びなれちゃってて気づかなかった。そういや、アリスって、海外の名前じゃんね?
ほぅほぅ。ふぅむ。なるほどなるほど。アリスは日本にいる時、大変だったわけだ。
この大変さは僕が海外生活を始めて逆の立場に置かれて初めて気づけた大変さである。言葉が思考に与える影響というのは面白い。だって会話するときだけじゃなくて一人で考えるときも言語で考えるでしょう。
今、僕は英語を覚え始めると同時に日本語脳を解体しているイメージがある。考えるときも英語でフレーズを考えたりする時間が増えている。以前より考え方がダイレクトになってきている部分も感じる。
新しい言語と思考を受け入れていくというのは怖さもあるが同時にワクワクする。新しい波はいつも海の向こうからやってくる。
きっと、あれだな。
アリスは僕にとってペリーならぬ黒船だったんだ。
xx
KENSUKE SAITO